WBC世界フェザー級タイトルマッチ
挑戦者:粟生隆寛(3-0)チャンピオン:オスカー・ラリオス
粟生選手、2度目の世界挑戦は2008年10月にダウンを奪いながらも1-2の判定で敗れたラリオスとのダイレクト・リターンマッチとなった。
試合はスピードに勝る粟生選手が優位に進め、序盤はほぼ完璧な内容。
中盤以降、接近戦を試みるラリオスに対しても細かくパンチを当ててペースを握らせない。
終盤、チャンピオンの意地を見せるラリオスのカウンターをもらう場面もあったが
最終12ラウンドにはやや強引ながらダウンを奪ってみせる完勝劇。
試合終了のゴングが打ち鳴らされると、粟生選手はリングに突っ伏した。
エリート街道を突っ走ってきた24歳の若者は挫折を知り、遂に世界チャンピオンになった。
榎戦の引き分けで泣き、
前回の敗戦で泣いた男は、
今回の勝利でもやっぱり泣いていた。恥ずかしいくらいに。
私も泣いた。
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
チャンピオン:長谷川穂積(1RTKO)挑戦者:ブシ・マリンガ
またしても心配は杞憂に終わった。
挑戦者決定戦で敵地タイに乗り込み、ウィラポンを4RTKOで下したブシ・マリンガ。
あまり情報のない挑戦者について聞こえてくるのは耳を疑うような報道ばかりだった。
この試合に備え900ラウンドものスパーをこなしてきたと言う。尋常ではない。
身長は長谷川とほぼ同じながらリーチは19cmも上回る188.5cm。尋常ではない。
計量も1.2kgアンダーと、ほぼスーパー・フライのウェイトでパス。尋常ではない。
この得体の知れないアフリカンに私は不安を煽られっぱなしだったのだ。
が、その不安はゴングがなると雲散霧消。
7連続防衛中のチャンピオンは、ランキング1位の指名挑戦者を全く寄せ付けなかった。
1分10秒過ぎ、マリンガの左アッパーにあわせてダウンを奪う。
立ち上がったマリンガに猛然とラッシュをかけ2度目のダウンを奪うと、最後は圧巻の左フック。スローな動きでキャンバスに手をつくマリンガ。試合を止めるレフリー。
完勝。
ダウンを奪い悠然とニュートラルコーナーに向かう姿、そこからマリンガを見下ろす様は王者然とした風格を感じさせ頼もしいことこの上なかった。
勝利者インタビューでは、試合時間の短さを詫びていた長谷川選手。
「日本のエース」は、今やその称号からもはみ出そうとしている。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
チャンピオン:オスカー・ラリオス(2-1)挑戦者:粟生隆寛
序盤、粟生選手は積極的に仕掛け、4ラウンドには右のカウンターでダウンを奪う。
「すわKO勝ちか!」と大いに期待させてくれたが、詰め切れず。
この試合最大のチャンスを逃してしまう。
ダウンを奪った感触が忘れられなかったのか、
カウンター狙いの待ちのボクシングは見ていてもどかしかった。
勝利への糸は粟生選手の面前に垂れていた。
粟生選手はその糸を掴むところまでいったのだが……。
試合巧者のチャンピオンは勝つために、
いま何をすればいいのかを冷静に判断、アウトボクシングに方針を転換。
ジャブを的確に当てることで粟生選手を泥土へ引きずり落とす。
終盤もラリオスの老獪さが光る。粟生選手も負けじと必死にくらいつく。
両者、全力を尽くした殴り合いは決着つかず、12ラウンド終了。
結果は1-2の判定で、粟生はプロ入り後初の黒星。タイトル奪取ならず。
戦前予想は圧倒的不利。前の試合(榎戦)では「負けないこと」を最優先した超玄人好みの心理戦に終始、ファンの不評を買った粟生選手だったが、この大一番で素晴しいパフォーマンスを見せてくれた。
「次」に期待したい。
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
チャンピオン:長谷川穂積(2RTKO)挑戦者:アレハンドロ・バルデス
長谷川、鬼神の如き強さで7度目の防衛に成功。
1ラウンドで様子を見ればもう十分とばかりに2ラウンドで鋭いパンチを打ち込むと、
バルデス、まるで胴回し回転蹴りをしているかのように倒れこむ。
立ち上がるも、長谷川が凄まじいラッシュをかけたところでレフリーが止めに入り試合終了。
快勝。
長谷川選手の試合は、本当に安心して見ていられる。
熟練ドライバーの車に同乗しているような、気がついたら目的地についていた、という感覚。
戦前の「サウスポーが苦手。負けるとしたらサウスポー」という長谷川選手の言葉も、
この一戦を盛り上げるためについたウソなのではと思わず邪推してしまう強さだった。