マニー・パッキャオ――ボクシング界の常識を覆し続けてきた男は、
またしても私の、そして世間の予想を大いに裏切ってくれた。
この試合は「パッキャオvsデラホーヤ」や「パッキャオvsハットン」のようにはならないだろう。
そう思っていた私は最初の2ラウンドを観て、「はは、予想通りだ」と喜んだ。
だが、私の予想通りに進んだのはその6分間だけだった。
パッキャオは3ラウンドに右フック、4ラウンドに左アッパーでダウンを奪うと試合を完全に掌握。
以降は一方的な展開となり、成す術のなくなったコットは何とかKO負けを免れようと足を使って逃げるのが精一杯に。
もういつストップされてもおかしくない状況が続く中、最終12ラウンド50秒過ぎにパッキャオの左がコットの顔面を捕えたところで遂にレフェリーが試合をストップした。
WBOウェルター級タイトルマッチ
マニー・パッキャオ(12RTKO)ミゲール・コット
パッキャオは記念すべき50勝目を飾るとともに、5階級制覇を達成した。
試合後のコット陣営のコメント。
ミゲール・コット:パンチがどこから来るのか分からなかった
ジョー・サンチアゴ(トレーナー):スピード以前にパンチ力が予想を遥かに上回っていた
不世出の天才を目にすることが出来るのは、その競技を見てきたファンにとって最高のご褒美である。
マニー・パッキャオ、私はあなたを全肯定します。本当にどうもありがとう。
私は、パッキャオの力を完全に見誤っていた。
そしておそらくは世界中の人々も。
スーパーライト級現役最強の男・ハットンが何も出来ず、
僅か6分間で3度もダウンを奪われると誰が思うだろう。
マニー・パッキャオ(2RTKO)リッキー・ハットン
観ていて本当に体が震えた。叫び声を上げてしまった。
こんな衝撃はいつ以来だろうか。とにかく凄すぎる。
世界中の予想を裏切り、
世界中の期待に応える偉大なフィリピン人。
パッキャオがボクシングを選んでくれて本当によかった。
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「太陽は西から昇りました!」
アナウンサーは、そう表現した。
ドリームマッチと銘打たれ、ボクシングの常識を破った階級無視のマッチメイクは、
予想外の――というか予想してはいけなかった(?)――結末を迎えた。
小説、TV、映画、etc.。
様々な物語が身近にある環境で育ったきた私たちは、安直にドラマを求め過ぎている。
でなければこんな試合が組まれるはずがない。
だが、ドラマというものはそんな都合よく生まれてはくれない。
私は、体格で上回る方(デラホーヤ)が危なげなく勝利するのでは、という反ドラマチックかつ極めて真っ当な予想をしていた。
その予想はパッキャオの拳によって木っ端微塵となった。
フライ級のチャンピオンだった男が、元ミドル級チャンピオンをワンサイドで下したのだ。
マニー・パッキャオ(8R終了TKO)オスカー・デ・ラ・ホーヤ
伝説が敗れ、新しい伝説が生まれた。
これまで、不利予想の戦いを幾度となく覆してきた男、マニー・パッキャオ。
このフィリピン人ボクサーは、驚かすことを止めない。
同時代を生きている私たちは、伝説の目撃者になれるのだ。
何という特権だろう。