シナリオは、出来上がっていた。
入札で地元メキシコでの開催を実現させ、「理不尽な敗北」のリスクを最小化。
無名の日本人チャンピオンからベルトを奪い、満座の前でその強さを見せつける。
そして、前座試合で勝利したラファエル・マルケスとベルトを賭けたビッグ・マッチ。
メキシコ人みんなウハウハ。
ジョニー・ゴンサレスを中心に据えたこの計画は何の問題も無いように思われていた。
実際、試合はその通りに進行していった。
1ラウンド、ジョニゴンは右ストレートで西岡からダウンを奪ってのける。沸き立つ会場。漂う楽勝ムード。
2ラウンドは静かな展開ながら攻めるジョニゴン、捌く西岡の構図。
西岡若干優勢にも見えたがメキシコということもありポイントはジョニゴンか。
ああ、こんな感じで今日の試合は終わるのだな。メキシコサイドの思う壺じゃないか。そう思った。思ってしまった。
ところが。
3ラウンド開始59秒、西岡の踏み込んでの強烈な左がジョニゴンの顎を捕らえる。
ザリガニのように後ろに吹っ飛び、ロープに頭を打つ痛烈なダウン!
なんとか立ち上がるジョニゴンだが覚束ない足取りにレフリーが試合を止める。
西岡、見事過ぎるワンパンチKO勝利!
メキシコ人が練りに練ったシナリオは、日本人の手によってがビリビリに破かれ水泡に帰したのだった。
WBCスーパーバンタム級タイトルマッチ
西岡利晃(3RTKO)ジョニー・ゴンサレス
日本人選手としては24年ぶりの海外防衛成功。しかも相手はビッグ・ネームの指名挑戦者。
間違いなく日本ボクシング界にとって歴史的な勝利である。
4度の世界挑戦失敗、アキレス腱断裂、引退勧告。
地獄を見てそこから這い上がってきた男の情念を侮ってはいけない。
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