私のゆるせない話「ラストオーダー」

以前、後輩数人と居酒屋に行ったときのこと。

当時の私は手羽先の旨さに完全にやられており、
その日も他のつまみにはほとんど目もくれず手羽先ばかりを貪り食っていた。

酒を飲み、手羽先を食い、先輩風を吹かせてウザイ人生論を語る。
後輩にとっては苦痛でしかない、当人にとっては気持ちよい時間はあっという間に過ぎてラストオーダーとなった。

もちろんここは手羽先を注文だ。
それは決まっている。問題は量である。
私はもう1人前は間違いなくイケる、だが2人前となると怪しいと思い、他に食べる者を募った。
誰も手を挙げず「もう要らないです」「お腹いっぱいです」の声。
仕方がない。2人前頼んで残すのは心苦しいので、1人前だけ注文した。

ややあって手羽先1人前が運ばれてきた。
これが今日最後の手羽先なのだ。そう思うと私は粛然とした気持ちになっていた。
すると。

食べない、と言っていた後輩が手羽先に手を伸ばしている。
なぜっ? なぜっ? 満腹だと言ってたじゃないか。

「それは、私の手羽先だ!」
「今日という日のフィナーレを飾る大事な手羽先なんだ!」

と言いたかったが何とか思いとどまった。
もし言ったら「この人は何て器が小さいんだ」「頭がおかしいんじゃないか」と蔑まれるのは必定。面目丸つぶれである。
それだけは何としても避けねばならぬ。
私は震える身体を悟られぬよう誤魔化し、つくり笑いでその場をやり過ごしたのだった。

結局、ラストオーダーは0.5人前程しか食えず。
人知れず被害者のような感覚に襲われながら帰宅。嗚呼。


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