「先んずれば人を制す」のか

学生時代、2学期の始業日を間違え一日早く学校に行ったことがある。

私はその事実を決してネガティブには捉えなかった。
「先んずれば人を制す」という言葉を知っていたからだ。
私はクラスメイトはおろか全校生徒より、
いや夏休みの期間なんてどこへ行ってもそんなに変わるもんじゃないだろうから
かなりの人数より一日先んずることに成功したという認識でいたのだった。

もちろん、誰にも言わなかった。
まあ競争社会である現代、他人を出し抜くためには仕方あるまい。
悪く思わないでくれよ。
と思っていた。

大体、わざわざ公言しようものなら
私のような一日前ではなく二日前から来る者、三日前から来る者、
仕舞いには夏休み初日から来る猛者が出てくるであろうことが
容易に想見できたからである。

それではあろうことか先んじられ、制されることになってしまう。
これは何としても避けたい。受け入れがたい。

それに夏休み初日から学校に来るなど、
夏休みという国民の大人気制度を根幹から否定する国家反逆罪にも等しい行為であり、
私としても到底付き合いきれるものではない。

で、先んずることに成功したまま今日に至るのだが、
いまだ「人を制す」ることができているとは思えないので、
今か今かと一日千秋の思いで待っている次第。嗚呼。


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